国家資格「施工管理技士」のひとつ、「造園施工管理技士」。個人宅の庭の手入れにとどまらず商業施設や公園、街路樹等の整備など、この資格で携われる仕事の範囲は想像できるより幅広いでしょう。このページでは現場監督を目指す人のために「造園施工管理技士」の資格内容や取得方法についてまとめています。
造園施工管理技士は、建築系施工管理技士の資格の中でも造園工事に特化した国家資格であり、複数ある施工管理技士の中でも最難関といわれている資格の1つです。
学校や病院などの公共施設、道路や公園の緑化事業、あるいはテーマパークのような大規模施設で適切な造園工事の施工管理を行うために必要とされる資格であり、建築業界では非常に重宝されます。1級造園施工管理技士でなく2級造園施工管理技士の資格であっても、現場監督としてキャリアアップを目指すのであれば魅力的な資格といえるでしょう。
造園施工管理技士は検定試験の合格率が低く、令和元年度は2級の第一次検定の学科試験で約50.9%、さらに第二次検定の合格率が約37.6%と、全体の受験者で見れば合格率約19%という狭き門。当然ながら、1級の学科試験ではさらに合格率が低下します。
参照元:庭NIWA「1級「実地」合格率は39.6%/2019年度造園施工管理技士試験」(https://niwamag.net/archives/2653#:~:text=2級合格率は,は11.8ポイントダウンした。)
造園施工管理技士の資格を取得するためには、1級・2級ともに検定試験(学科試験・実地試験)それぞれで60%以上の得点率が必要です。
ただし検定試験を受けるにはそれぞれ受験資格が定められており、特に最終学歴や保有資格に応じて必要な実務経験年数が異なります。
造園施工管理技士では、建築に関連する建築学や都市工学といった学科の他、造園に関する指定学科として土木工学や園芸学、林学などが定められており、大学や短大などでそれらの学科を卒業しているかどうかでも、必要な実務経験年数が変わるため注意しましょう。
17歳以上であれば誰でも第一次検定の受験資格を得られます。その後第二次検定へ進むために実務経験が必要になりますが、例えば大学の指定学科卒業者であれば卒業後の実務経験1年以上、一方中卒者は8年以上と定められており、時間に違いはあるものの学歴を問わず資格取得を目指せます。
1級の場合大卒(指定学科卒業者)で3年以上、中卒者(無資格)で15年以上と、必要な実務経験年数が2級に比べて増大します。
ここでは、造園施工管理技士の資格を取得した際のメリットについてご紹介していきます。
造園施工管理技士の資格を取得した場合には、「監理技術者」や「主任技術者」として仕事ができるという点がメリットのひとつといえます。
1級造園施工管理技士の資格を取得すると、監理技術者または主任技術者になることができます。
監理技術者は、下請契約の請負代金が総額4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上といった大規模の建設現場に置くことが定められている技術者であり、造園を含めた建築業の技術的な水準を保つことを目的としています。現場で働く職人や技術者に対し、指導や監督を行うといった役割も持っています。
主任技術者は、監理技術者が配置されない建設工事現場において配置されるものとなっており、2級造園施工管理技士資格を取得した場合には、主任技術者として仕事ができます。
このように、1級・2級それぞれで担える役割は異なるものの、資格取得前と比べると仕事の幅が広くなること、また責任のある仕事に就けるという点は大きなメリットといえるのではないでしょうか。特に1級造園施工管理技士の資格所有者がいる場合にはより大きな規模の工事を受注できることから、企業にとってもメリットが大きいといえます。
造園施工管理技士資格を取得している場合、就職や転職を有利に進められることがあります。
上記でご紹介した通り、資格保有者がいる場合には大きな工事を受注できるなど会社側にもメリットがもたらされます。このことから、資格保有者を採用したいと考える会社が多く、資格を保有している場合には市場価値が高いといえるでしょう。このことから、造園施工管理技士資格を持っており、さらに実務経験もあるといった場合には転職や就職を考えた際に有利に進められるケースもあると考えられます。
また建築工事の会社のほかにも、造園会社への転職や土木会社に転職したい場合にも資格を活かせますし、その知識や経験を活かして造園職の公務員に挑戦する、という選択肢も考えられます。
以上から、造園施工管理技士資格の取得によって、挑戦できる仕事の幅も広げられるといえます。
造園施工管理技士資格を取得した場合には、企業によっては資格手当をもらえる場合もあります。資格手当としてどれくらいの額が支給されるかはその会社によって異なりますが、5,000円程度支給されるケースが一般的といわれています。
さらに、資格取得後は上記のようにさまざまな現場で責任ある立場での活躍が可能となりますので、実績をあげていくことにより昇格のチャンスを掴める可能性もあります。このように、資格取得により収入を上げられるという点もメリットのひとつです。
造園施工管理技士を目指す場合には、試験の3ヶ月前には勉強を初めておきたいところです。もちろん、早めに勉強を始めるに越したことはありません。まずは勉強を始めてみて、理解度に応じてスケジュールを組んでいくと良いでしょう。
合格を目指す場合には自分に合った勉強方法を選ぶという点が大切です。ここでは、試験に向けた勉強方法をいくつか紹介していきますので、参考にしてみてください。
まずは参考書で勉強を進めていく方法があります。特に2級造園施工管理技士の場合は過去問中心の出題とされていますので、参考書や過去問題集を取り入れて勉強することで合格を目指せます。
また、参考書を使って独学する場合には、自分のペースで進められることからモチベーションを保ちやすい点もメリットです。ただし、「わからない部分をそのままにしない」という点については十分に注意する必要があります。
動画教材は、DVDやネット経由で講義の動画を見れるものです。プロの講師が講義を行っているため、参考書よりも内容を理解しやすいと感じる方もいるでしょう。参考書に合わせてプロのわかりやすい解説を聞くようにすることで、さらに理解を深められる可能性もあります。
また、動画教材を購入するメリットとして、「わからない内容をEメールなどで質問できる」という特典がついている教材があるという点が挙げられます。このような教材であれば、わからない部分をそのままにしてしまう、ということもありません。
造園施工管理技士の試験対策用のコースがある専門学校に通うという方法もあります。しっかりとスケジュールを組んで学習を進めていけるため、スケジュールの自己管理が苦手だったり、独学でわからない部分がたくさんあるといった場合には専門学校がおすすめです。
さらに専門学校の場合は講師がすぐそばにいることから、わからない内容が出てきたらすぐに質問できる点もメリットといえるでしょう。
合格を目指す場合には、コツを押さえて勉強をしていく必要があります。ここでは、どのようなコツがあるのかをご紹介します。
過去問を繰り返し解くようにすると、出題傾向がわかることに加えて自分が苦手とする分野について把握できます。独学で進めていく場合もどの分野を重点的に勉強すれば良いかがはっきりわかるので、過去問を繰り返し解くようにしましょう。おすすめは「3〜5年分」の過去問を解く、ということです。また、過去問を解いたら解説までしっかりと読むようにするのもポイントです。
勉強の進め方のポイントとして、「必須問題を優先する」という点も挙げられます。試験では「必須問題」と「選択問題」の2種類の問題が出題されますが、より優先度が高いといえるのが必須問題となっています。
このことから、まずは必須問題の学習から取り組むようにして、その部分の学習が終わったら選択問題の勉強に入っていくと、効率よく学べます。
試験の中では、点数配分が高い「経験記述」がネックになることがありますので、この部分についてもしっかりと対策をしておきましょう。この問題は、これまでの施工経験を元に、出されたテーマについて文章を記述することになります。
採点については公開されてないことから、客観的な評価はなかなか難しい部分がありますが、書いたものを周りの人に読んでもらったり、上司からのフィードバックをもらうなどしながら文章力を上げていくことがおすすめです。
造園施工管理技士はあらゆる現場で造園工事の施工管理を行う他、例えば神社仏閣といった純日本的な和風庭園などの施工管理に携わることもあり、それぞれの環境や目的に応じた施工管理業務が求められます。また環境保全への意識が高まる中、緑化のため造園の需要も高まるとの予想もできるため、将来性のある資格だとも考えられます。
造園は自然や植物が好きな方に適しています。豊かな緑と香りの中で仕事をしたい方にもぴったりです。仕事内容によっては、美しい庭造りに携われます。観光地の日本庭園を造ったなら一生の自慢です。携わった日本庭園で、人々が笑顔で楽しんでいるのを見れば「やってよかった」と思えるでしょう。
人に喜んでもらえたり感謝したりしてもらえる仕事です。きれいに整えられて完成度が高いと、依頼者が感動するぐらい喜ぶこともあるかもしれません。人の役に立ちたいという方も向いています。
安定した仕事です。庭園は作れば終わりではありません。樹木は伸びますし、植物の入れ替えもありますから、以降、定期的に手入れが必要です。継続的な手入れが必要だからこそ、安定した仕事といえます。
プロフェッショナルといわれるぐらいレベルアップすれば、高い年収が期待できます。造園施工管理技士という資格もあり、取得すれば客観的な証明として仕事の安定に役立つでしょう。1級造園施工管理技士なら、まさしく多くの企業が求める人材です。庭師や、ガーデンデザイナーなど選択肢が広がります。
造園施工管理士になり、実務経験が豊富なら独立も夢ではありません。職人としていわれる仕事をすればいい立場ではなくなり、営業も必要ですが、庭園で自分を表現したい方などは夢が広がります。
造園工事は外仕事です。真夏や真冬だと、対策をしないと体も心も保ちません。夏場も安全対策のために長袖長ズボンです。冬場は衣服を着込んだり、カイロを使ったりしてしのぎます。夏場の対策はむずかしいですが、ファン付きの空調服を用意したほうがいいでしょう。
造園工事も工期が決まっています。悪天候のために休むとしても、続けば工期を守れません。雨でも雪でもしかたなく作業が必要な場面が出てくるのです。基本的に、雨や雪は事故が起きやすいため危険度の高い作業は避けます。ただ、やはり雨や雪の中で作業をするため、体力がないときついと感じるでしょう。
悪天候が続いて休んだとしても、最終的に、約束した期日までに作業を完了しなければなりません。悪天候が続けば、スケジュールがタイトになりがちです。期限ぎりぎりになると必然的に忙しくなります。最初に余裕を持ったスケジュールを組むため極端に忙しくなる状況は少ないですが、頭に入れておいたほうがいいでしょう。
基本的に施工管理者は現場監督ですから、肉体労働は少ない現場が多いでしょう。ただし、小規模な現場だと大人数が送り込まれることはありません。必然的に、現場監督も一緒に体を動かして作業することが求められます。
専門的な高レベルの作業は職人に任せますが、運搬のような簡単な仕事が必要です。「自分は現場監督だからしない」という態度だと職人に嫌われますし、工期に間に合わない場合も出てきます。現場の状況や人手不足なら、施工管理者でも肉体労働があると考えておいたほうがいいでしょう。
造園施工管理の将来性は明るいと予想できます。近年、地球温暖化が世界的な問題として解決が求められている状況です。郊外と比較し、都市部の気温が高くなるヒートアイランド現象の原因のひとつに、緑地や水面の少なさが指摘されています。
緑が少なくなれば、生物が住める環境が減少するのも問題です。森林墓による災害の増加も危機感を持たなければなりません。緑が少なくなれば土地が痩せ細り、砂漠化につながるリスクが増大します。また、日本は台風や地震が多い土地柄のため、土砂崩れが発生しやすい環境です。森林伐採が土砂崩れの原因のひとつとも考えられています。森林整備も造園施工管理者の仕事です。
造園施工管理は、庭の木々の整備だけではなく緑に関する施工全般をカバーします。地球温暖化の防止、良好な生態系の確保や森林整備など担当する業務は幅広く、ニーズも増加中です。そのため、造園施工管理の将来性はあるといえるでしょう。
造園施工管理技士が就職する先は、主に造園会社となるケースが多く見られます。資格を持っていることにより、一定の経験とスキルを持っていることを証明できますので、転職も有利に進められるのではないでしょうか。
ただし、造園のみを手がける会社はあまり多くなく、土木の求人の中に造園業が含まれる、という場合が多くなっています。
造園施工管理技士に向いている人は、まず「緑を扱う仕事をしたい」と考えている人が挙げられます。家にこもっているよりも外で仕事がしたい、自然に囲まれていると元気になるという場合には、造園施工管理技士の適性があると考えられるでしょう。
また、屋外で行う作業がメインとなりますし、重い機械を取り扱ったり大きな枝を運んだりすることもありますので、「健康で体力もあること」という点も重要なポイントとなってきます。
さらに、造園の仕事は複数の職人によるチームで進めていきますので、周りの人と一緒に工事の完成を目指していきます。造園施工管理技士は現場のまとめ役を担当しますので、「チームで仕事を進めることにやりがいを感じる」という人が向いているといえるでしょう。
未経験だとしても造園施工管理に転職できる可能性は十分にあります。ただし、転職しやすいのは年齢の問題があり、30代前半なら未経験でも将来性や、やる気があるなら企業も前向きに採用してくれるのです。年齢が高くなるとハードルは高くなりますが、人手不足という問題もあって、40代以降でも年齢不問、未経験でも募集をかけている企業もあります。
当然、造園業全般、造園施工管理者も含めて体力が必要な場面は多いのです。企業は雇用してもすぐに辞められても困るため「体力面」も見ています。さらに、専門知識や技術も身に着けなければなりません。日頃から運動して、年齢関係なく見るからに体力があるという方は、企業も安心して依頼できるのです。
未経験から造園業に転職を検討するなら、入りたい企業の研修制度が整っているかどうかもチェックしなければなりません。研修も行わず、いきなり現場に放り込まれても落ち着けないものです。パニックになれば事故のリスクが高まります。そのため、研修制度が整っているところのほうが無難です。