このページでは現場監督を目指す人のために、「建築施工管理技士」の資格内容や取得方法についてまとめています。
建築施工管理技士は「施工管理技士資格」の1つであり、建設工事の現場において施工管理を行うための資格です。建築施工管理技士には1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士の2種類があります。
1級取得者は16種類の建設工事で施工管理を行うことができ、2級取得者は「建築・躯体・仕上げ」の3種類のどれを所有しているかにより、担当できる工事種類が変わります。
1級建築施工管理技士では大規模な工事現場での施工管理に従事できるため、現場監督としてキャリアアップを目指す上でも取得しておけば有利になると言えるでしょう。
建築施工管理技士には建設現場を全般的に管理する能力が求められます。また環境の変化や状況に応じて調整できる応用力も求められており、資格試験では建築学や施工管理法といった知識に関する学科試験だけでなく、施工管理に関連した実務能力もテストされることがポイントです。
なお第一次検定(学科試験)に合格した人でなければ、第二次検定(実地試験)へ進めないため、まず第一次検定の合格を目指すようにしてください。
2級の場合、3つの検定区分として「第一次・第二次検定」「第二次検定のみ(第一次検定免除)」「第一次検定のみ」があり、第一次検定のみに関しては17歳以上であれば受験申し込みができます。ただし第一次検定に合格しても、第二次検定へ進むためには大卒で1年以上といった実務経験が必要です。なお最終学歴が中卒の場合は8年以上の実務経験がとなっており、学歴に応じて必要な実務経験が短縮されます。
検定試験は年に2回(6月・11月)。第一次検定の合格者が再度試験を受ける場合、第一次試験を免除し第二次検定のみにチャレンジすることが可能です。
1級の受験資格は2級の場合よりもさらに細分化されており、大卒で実務経験3年以上、短大卒や高専卒で実務経験5年以上といった条件があります。ただし2級建築施工管理技士の資格を取得している人であれば、合格後5年以上の実務経験によって受験資格を得ることが可能です。
1級建築施工管理技士であっても、中卒者など最終学歴を問わず受験できます。ただしその場合は原則として15年以上の実務経験が必要となり、2級の時よりも条件が厳しくなることに注意してください。
その他、2級建築士試験合格者であれば合格後の実務経験が5年以上必要であるといった条件も設定されています。
1級は2級よりも試験範囲が拡大され全体的に難易度が上昇するほか、試験回数が年に1回になります。年に1度のチャンスを逃せば次の受験はまた1年後になってしまうので、悔いのないように準備をして挑みましょう。
建築施工管理技士の資格を取得するとさまざまなメリットがあります。ここでは、どのようなメリットが考えられるのかを見ていくことにしましょう。
例えば1級建築施工管理技士の資格を取得した場合には、監理技術者・主任技術者・専任技術者として働くことが可能となります。また、2級建築施工管理技士の場合には、中小規模の建築現場において主任技術者として働けるようになります。いずれの級においても、仕事の幅が広がり責任のある仕事を手掛けられるようになります。
ちなみに監理技術者とは元請負が締結した下請契約の請負代金4,500万円以上の工事の場合に専任で配置する技術者です(建築一式工事は7,000万円以上の場合に配置)。大規模な現場で仕事ができるとともに、下請人に対して指導監督を行う立場となっています。
また主任技術者は、監理技術者が必要ではない規模の工事において、元請・下請問わず配置される技術者のことです。専任技術者は、建築業許可を得た事業所ごとに配置を行う技術者のことを指します。
公共工事の競争入札に参加する業者に対して、客観的に経営能力などを評価するための審査を「経営事項審査」といいます。この審査において、施工管理技士資格の有資格者は技術力評価で加点の対象となっています(例えば、1級建築施工管理技士の有資格者がいる場合、1人当たり5点が加点)。
上記に加え、監理技術者講習を受講した上で「監理技術者資格証」の交付を受けた場合には、1点上乗せされます。このように、1級建築施工管理技士がいる業者は経営規模評価を高められることから、公共工事の競争入札に参加する業者にとっては1級建築施工管理技士資格を持った人材の採用を希望していると考えられます。
上記でご紹介した通り、建築施工管理技士の資格を取得すると監理技術者や主任技術者、専任技術者として働けるため、給与アップが期待できる点も資格取得のメリットといえるでしょう。さらに、1級建築施工管理技士は2級よりも上位の資格であることから、より給与の上昇が期待できます。
さらに、資格を取得した後にさまざまな現場で経験を積んでいけば、転職などについても有利に進められるケースもあるでしょう。建築施工管理技士の資格と経験を持っている場合、建築業界においては需要が高いといえます。このことから、キャリアアップや給与アップを狙いたいと考えている方にとっても建築施工管理技士資格の取得を目指すことは大きなメリットがあるといえるでしょう。
例えば2級建築施工管理技士を目指す場合には、効率的に勉強をした場合でも「100〜150時間」ほど必要といわれています。かなりの勉強時間が求められることになりますので、しっかりとスケジュールを組んだ上で学習を進めていくことが必要です。
合格を目指すためには自分に合った勉強方法を探すことが重要なポイントとなってきます。ここではどのような勉強方法があるのかご紹介していきますので、ぜひ参考にしててください。
まず考えられるのが参考書で独学を進める方法です。この方法であれば自分のペースで勉強を進められます。また、建築施工管理技士の試験の場合、専門分野については大学や専門学校で学んできた方も多いでしょう。このように既に理解している部分についてはさらっと勉強して、ほかの部分をしっかりと勉強することもできます。
参考書での学習は、自分のペースで勉強できるためモチベーションを保ちやすい面もありますし、参考書さえあれば通勤時間など合間合間で勉強することも可能な点がメリットともいえます。
DVDやインターネット経由で講師が講義しているものを見ながら自分で勉強していく方法です。こういった教材を購入して使う場合、もしわからないことがあった場合にはメールで質問できるといった特典付きのものもありますので、分からないことをそのままにせずに済むといったメリットがあるでしょう。
この方法であれば好きな時に動画を見れるため、自分のペースで勉強を進められるという面もあります。さらに、わからない部分を繰り返して学習するといったことも簡単にできます。
ただし紙の参考書に比べると高価となりますので、まずはお試し利用ができる教材を探してみると良いでしょう。
専門学校に通って勉強する方法もあります。専門学校ではしっかりとカリキュラムを組み試験合格を目指した授業を行ってくれますので、短期間で学習をしたい方にとっては大きなメリットがあるといえます。
わからないことがあった場合には、その場で講師に聞ける点も専門学校に通うメリットです。もし参考書を読んでみたけれども理解ができないことが多い、理解するまでに時間がかかるといった場合には専門学校で学ぶのがおすすめです。
建築施工管理技士試験の合格を目指す人は押さえてほしい、学習のポイントをご紹介します。
まずは過去問を繰り返し解くことがポイントとなります。何度も過去問を解いてみると自分の苦手な分野もわかってきますので、その部分を調べたり重点的に学習したりすることによって、徐々に苦手な分野をなくせます。
また過去問を繰り返し解くと、出題の傾向を把握できるといったメリットもあります。このことからも、合格への近道としてはまず過去問を繰り返して解く、という点が重要になってきます。
ただし2021年度から試験内容が変更になったため、変更後の過去問を繰り返し解くようにしましょう。
施工管理技士の試験には、必須問題と選択問題があります。
必須問題とは、現場を管理するにあたって必要な知識を問われる問題となっており必ず回答すべき問題です。また選択問題は必要回答数を満たしていれば解かずに飛ばすことが可能です。
このことから必須問題は優先度がより高いといえるため、しっかりと回答ができるように優先的に勉強しておくことが必要です。
二次試験には経験記述があるためこちらの対策を行っておくことも大切です。経験記述では、施工経験に基づいた解答が求められる問題となっています。配点は30〜40%とかなり割合が大きいものなので、対策を行っておきましょう。
ポイントは、客観的に見てもしっかりと伝わる文章で記述を行えるようにすることです。採点基準が公開されていないため客観的な評価が難しい部分ではありますが、上司に見てもらったり、講習会などでしっかりと対策することが必要といえます。
建築施工管理技士の主な仕事は、簡潔に言うと「“工程・品質・原価・安全”の管理」です。工程表や計画に基づいて工事の進捗を確認・調整したり、建材の適切な保管や、材料費・人件費の管理、作業員の事故を防止し、現場の安全性を維持するといった内容になります。「“工程・品質・原価・安全”の管理」という4業務において、「QCDSE」を意識することが重要で、それぞれの文字が以下のような意味を持っています。
建築施工管理技士には、この5つの観点から現場を管理し、適切に工事を進めていく技能が求められます。
1級建築施工管理技士の資格を取得した場合、管理できる工事の規模に上限がありませんので大規模な工事に関わることができます。建築業界を見てみると、全体が人手不足であることや、今後大型の建物や高速道路などの老朽化対策なども必要となってくると考えられることから、建築施工管理技士の仕事が将来的になくなりそうといった心配は比較的少ないといえるでしょう。
また、建築施工管理技士の資格を取得すると転職に有利であるという面や給料アップにつながること、自分が手がけた仕事が目に見える形で残ることからやりがいが感じられる仕事である、といったこともあります。このように建築施工管理技士の資格取得にはさまざまなメリットがあるといえますので、建設現場で働きたいと考えている場合には資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
建築施工管理技士の魅力として、ビルなど形のあるものに携われる、という点が挙げられます。完成するまでに年単位の時間が必要な現場もあるほどスケールの大きな仕事に関われることは、大変だと感じるタイミングがある反面大きなやりがいを感じられるのではないでしょうか。
建築施工管理技士は、現場に関わる職人など多くの人をまとめていくことも仕事のひとつです。職人気質の人も多く、なかなか一筋縄ではいかない場面も多くあるものの、さまざまな人とどうコミュニケーションをとっていくかが腕の見せ所でもあります。多くの人と力を合わせて、ゴールに向かって進むということに対してやりがいを感じている、という建築施工管理技士もいるようです。
例えば商業ビルや駅、病院、公共施設など社会を支える建築物に関われるのも建築施工管理技士の魅力の一つです。もちろん責任は大きいものの、無事に建物が完成したところを見たときにはなんとも言えない気持ちになるでしょう。さらに、自分が関わった建物が多くの人に使われているということを実感できたときにもやりがいを感じられるのではないでしょうか。
前述の通り、建築施工管理技士は現場で働く人とコミュニケーションを取りながら工事を進めていくことが必要になります。誰かひとり優秀な人がいるだけでは工事はうまく進みません。スタッフが同じゴールに向かって進んでいくためにも建築施工管理技士が現場をまとめていく必要があるのです。
しかし、やはり様々な人がいますから、コミュニケーションをうまく取れない場合も。そんなときに仕事の大変さを感じることがあるかもしれません。
計画通りに工事を進める必要がある反面、建には築施工管理技士安全を常に意識しながら進めていくことも求められます。そのため、何か起きないかという心配や不安がつきまとう時もあるでしょう。この点については、仕事に集中して事故が起こらないように取り組むことが大切です。
建築施工管理技士は忙しい仕事です。1日の現場作業が終わった夕方以降にはデスクワークを行う日もあります。特に繁忙期は夜遅くまで仕事をすることもあるでしょう。
建築施工管理技士の転職先としては、やはり建設業の企業への転職が考えられます。特に、1級建築施工管理技士の資格を持っているのであれば、大規模な工事を扱えるということで優先的に採用されやすい傾向があるといわれています。
現在は建築施工管理技士の求人が多いことから、経験や技術がある場合には、様々な企業が選択肢として上がってくるでしょう。
施工管理技士は高いコミュニケーション力を求められる仕事であることから「色々な人とコミュニケーションを取るのが好きな人」が向いているといえます。仕事をする中では、現場で働く職人やクライアントと関わっていく必要があります。加えて、リーダーシップも求められるのが建築施工管理技士の仕事。現場に関わる人にしっかりと指示を出せれば、スムーズに工事が進んでいくでしょう。
また、「計画的に物事を進められる」という点も施工管理技士に求められるスキル。建築工事を計画的に進め、管理を行っていく必要があるためです。1つ1つの工程を予定通りに進められないと、工事全体に遅れが生じてしまうために、計画を立て、その通りにきっちりと進められる人が向いているといえるでしょう。