このページでは、施工管理技士資格の中で30年ぶりに新設された「電気通信工事施工管理技士」について、資格内容や取得方法などをまとめています。
電気通信工事施工管理技士は令和元年に新設された施工管理技士の資格であり、建築系施工管理技士の種目としては7つ目にあたる、30年ぶりの追加資格です。また2020年の検定試験は一部が中止された影響もあり、令和3年度時点では資格取得者が非常に少ないといったことも特徴です。
電気工事に関連する施工管理技士の資格としてすでに電気工事施工管理技士という資格がありましたが、電気工事施工管理技士が電気機器や配線工事といったものを幅広く施工管理するのに対して、電気通信工事施工管理技士はIT関連のネットワークや通信インフラの構築など、電気通信に関連する分野をカバーしています。
そのためAIやITの発展によって今後ますます情報社会・スマート社会として発展していくことを考えれば、電気通信工事施工管理技士は将来的にもニーズの高まりが予想される国家資格であり、早い段階で取得できれば現場監督として大きなチャンスを得やすくなるかも知れません。
資格取得のためには他の施工管理技士資格と同様、検定試験に合格しなければなりません。検定試験には学科試験(第一次検定)と実地試験(第二次検定)があり、学科試験へ合格した人だけが実地試験へと進めます。
2級の第一次検定の受験資格は「17歳以上」となっており、学歴や経験に関係なく試験を受けることが可能です。
一方第二次検定を受けるには電気通信工事に関連した実務経験が必須となっており、大学の指定学科卒業者とで卒業後1年以上を始めとして、短大卒や高校卒など学歴に応じて必要な実務経験年数が加算されます。また「電気通信事業法(昭和59年法律第86号)による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者」については、実務経験が1年以上に短縮されます。なお、必要な実務経験は最大で8年以上(中卒の場合)です。
1級の検定試験の場合第一次検定から実務経験が必要になります。例えば大学の指定学科卒業者で3年以上、中卒者であれば最長15年以上です。
ただし2級の場合と同様、電気通信主任技術者資格者であれば最終学歴に関係なく実務経験が6年以上となります。
こちらでは、電気通信工事施工管理技士の資格を取得するメリットについてご紹介します。
電気通信工事施工管理技士資格を取得すると、専任の技術者として仕事に就くことができるようになります。
軽微な工事(500万円未満)を手掛けている場合を除いて、電気通信工事業を営むにあたっては営業所の区域に伴い国土交通省大臣または都道府県知事から建設業許可を受ける必要がある、と定められています。この建設業の許可を受けた事業所においては、営業所毎に国家資格を保持しているまたは一定の実務経験を持つ「専任の技術者」を配置する必要があります。電気通信工事施工管理技士は国家資格であることから「専任の技術者」として認められます。
資格がない場合でも電気通信工事に携わることは可能ですが、電気通信工事施工管理技士の資格を取得した場合には、監理技術者や主任技術者として仕事を行えます。
この「監理技術者」とは、大規模な工事現場に配置が義務付けられているものです。具体的には元請の特定建設業者において総額4,500万円以上の下請け契約を行った場合に配置が必要となります(建築一式の場合は7,000万円以上)が、1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得した場合にはこの監理技術者として認められます。また、2級電気通信工事施工管理技士の資格を取得した場合には、監理技術者が必要とされる工事以外の現場に配置が義務付けられている「主任技術者」として認められます。
このように、資格を取得することによってより責任のある仕事に就けるようになります。
国や自治体から公共工事を請け負う場合には、「経営事前審査」を受ける必要があります。これは、建設業者における経営規模や経営状況、技術力などを審査するもの。この審査の点数は、公共工事の競争入札において、それぞれの建設業者の資格審査を行う場合に用いられます。
施工管理技士の資格を持つ者がいる業者は、経営事項審査の技術力評価で加点されます(1級電気通信工事施工管理技士資格の保持者1人あたり5点の加点、さらに監理技術者資格証を持っており、講習を受講することによって1点が追加される)。
以上から、電気通信工事施工管理技士の資格を持っていることは、企業にとっても大きなメリットがあるといえるのです。
電気通信工事施工管理技士は、近年のIT化により需要が高まっているという面もあります。インターネット環境が生活において必要不可欠となっていることから、電気通信工事の種類・件数は増加傾向となっています。
しかし、求められている電気通信工事の監督が可能な技術者は不足しており、非常に需要が高い状態です。さらに、今後も電気通信工事の需要は増え続けると予想されるため、資格の取得によって仕事の安定につなげられるといえるでしょう。
もし初めて電気通信工事施工管理技士の試験に挑戦する場合は「300〜500時間」勉強することが必要とされています。多くの場合、6ヶ月から1年程度かけて勉強しているといったケースが多いようですが、いずれにしても早めに勉強をスタートすることがおすすめです。
電気通信工事施工管理技士の試験に合格するためには、どのような勉強方法を採用したら良いのでしょうか。いくつかご紹介しますので、参考にしてみてください。
まずは、参考書を購入して自分で勉強を進めていくという方法があります。参考書を使用する場合には、スケジュールも自己管理することになるため、自分のペースで進められるのがメリットです。自分のペースを守りながら勉強を進められることでモチベーションも保ちやすくなります。
また、いつでもどこでも参考書さえあれば勉強しやすいという面もあります。ただし、わからないところが出てきた場合の対処には注意が必要。不明点をそのままにせず、解決できるまでしっかりと勉強する癖をつけましょう。
DVDやネット経由で、講師が講義を行っている動画を見ながら勉強を進めていくという方法もあります。有料の動画教材を購入して勉強する場合、わからない部分をメールなどで質問できるといった特典付きのものもあります。こういった教材であれば、不明点を放置することなく勉強を進めていけます。
さらに動画教材はもう一度復習したいところや自信のない部分については何度でも繰り返し見ることができます。また、動画教材を使って学習を行う場合でも、自分のペースで勉強を進められます。
電気通信工事施工管理技士の試験対策のコースを用意している専門学校に通い、勉強を進めていくという方法もあります。専門学校はしっかりとスケジュールを組んで講義を行ってくれる点、また講師が目の前にいるため不明な部分をすぐに聞けるという点がメリットといえるでしょう。
以上のことから、独学で勉強を進めているもののわからないところが多い、といった場合には専門学校を検討してみるのもおすすめです。
電気通信工事施工管理技士試験合格を目指して勉強する場合には、勉強のコツを押さえながら進めていくことがポイントです。
まずは「過去問を繰り返し解く」という点がポイントとなってきます。過去問を解くことで、自分が弱い分野がはっきり分かることもありますので、勉強をスムーズに進めていく上ではぜひ取り組みたい方法です。
ただし、電気通信工事管理技士試験は比較的新しい試験であることから、過去問が少ないという面があります。また、試験の出題方針が変更される可能性もゼロではないといった点を踏まえた上で、過去問を利用するようにしましょう。
試験には「必須問題」と「選択問題」の2種類があります。必須問題の方が優先度が高いことから、まずこちらから対策を行っておくと良いでしょう。必須問題の学習が終わったら、選択問題の学習に移るようにすると、効率的に勉強を進めていけます。
また、試験では「経験記述」という問題も出題されています。この問題は、施工経験を元にして、出題されたテーマに関する文章を作成することが求められます。
この部分については採点方式が公表されていないため、勉強を行う中で作成した文章を客観的に評価することは難しいですが、まずは誰にでも伝わりやすい文章を作成するようになるという点が大切です。特に文章を書くのが苦手な場合には十分に対策をしておきましょう。
電気通信工事施工管理技士が施工管理者として活躍する工事現場には、以下のようなものが挙げられます。
この他にも電波障害の予防や調査、解消といった工事もあり、電気通信工事施工管理技士は今後あらゆる工事現場で必要とされる可能性もあるでしょう。
電気通信工事施工管理技士は、電気通信工事の施工計画作成や工程管理、品質管理、安全管理などの役割を持っています。電気通信工事の幅は非常に広く、通信技術が進化する中では今後ますます必要とされていく資格であると考えられます。
特に1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得すると、どのような規模の電気通信工事でも管理や監督ができるということになりますので、大きな規模の工事を手がける企業にとっては欠かせない存在といえるでしょう。さらに2019年に新設された資格であることから、有資格者が不足しており転職にも有利であるというメリットがあります。大きな仕事をしたい、キャリアアップしたいと考える場合には、1級電気通信工事施工管理技士の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
電気通信工事施工管理技士になるには、実務経験が必要です。ただ、未経験でも、1年半程度で資格取得の条件を満たせます。業界の傾向として、人材不足が悩みの種です。電気通信工事施工管理技士は、新設されたとはいえ、需要が高まっているため仕事があります。幅広い現場で実務経験を積める資格です。
電気通信工事施工管理技士がカバーするのは、電話やインターネットです。両方とも社会インフラとして、なくてはならないものになりました。有線LANや基地局の設置まで、通信工事を任せられます。ニーズもありますし、最新技術に触れて、依頼者に提案や施工ができるのは魅力です。
電気通信工事施工管理技士として電気通信工事を複数担当し、経験が積み重ねると営業所の責任者に抜擢されることもあります。大型の現場も管理者になれば、大きな経験とスキルアップにつながるのです。収入アップや安定に繋がりますし、手に職をつけられます。あらゆる現場を経験して結果を残せば、独立も夢ではありません。
電気通信技術の進歩は日進月歩で、必然的に勉強や覚えることが続きます。資格があるからと怠けていれば、トレンドから取り残されてしまうのです。勉強不足や新技術を知らないとなれば、いくら資格があるといっても仕事を回してはもらえません。
未経験ならかなりの努力が必要ですし、負担も大きいでしょう。その分はやりがいや魅力であり、反面きついところといえます。
設備の施工分野は体力がないと務まりません。スケジュールを組んでも、他の作業が進行していれば待つことになります。スケジュールがスムーズに進まないと、後になって休む暇がない状況になるのです。施工以外にも書類申請のような事務作業や、配線図も書かなければなりません。
電気通信工事施工管理技士は、管理だけしておけばいいものではなく、幅広い業務を担当しなければなりません。体力がないと厳しいでしょう。
高所恐怖症の方にとっては、きつい作業です。工事次第ですが、たとえば、電話工事や携帯電話基地局の工事などは高所に登らないといけない場面もあります。高所恐怖症の方は、なるべく高所作業の仕事がない会社で働いたほうがいいでしょう。
災害があれば自分も被災者になります。ただ、電気通信設備が壊れれば、復旧のために出勤が求められる場合もあるのです。電話やネット通信機器の復旧が遅れるほど、大混乱に陥ります。社会の役に立てる部分でもありますが、自分のことは後回しにしなければならない場面も出てくるのです。
LAN工事のように小規模なら、ひとりで施工する場合も多いでしょう。インターネットの開通工事は、ひとりでも対応できる業務に当てはまります。ただ、未経験者からスタートしている場合、トラブルがあっても助けがなくてひとりでどうにかしなければならない場面もあるのです。その点は会社次第のため、慣れるまではベテランや先輩と組ませてくれるような会社で修行するのをおすすめします。
電気通信工事施工管理技士の資格を持っている場合には、さまざまな転職先が考えられます。例えば公務員や技術や技術系派遣社員として電気の施工管理の仕事や、電気施工管理の経験を活かせるビルメンテナンスの会社などが考えられます。そのほか、設計の経験を活かせる設計事務所やCADオペレーターなども候補に上がってくるでしょう。
このように、電気通信工事施工管理技士の知識と技術を活かすことにより、さまざまな所に活躍の場があるといえます。
電気通信工事施工管理技士として向いているのは、まず「新しい技術を学ぶことが好きな人」といえるでしょう。通信技術は非常に進歩するスピードが早い分野。自分ではメジャーだと思っていた技術がいつの間にか古いものになっていた、という可能性も十分ありえます。
以上のことから、新しい技術に対するアンテナをしっかりと張り、自ら進んで学んでいくという姿勢を持つ方が向いている仕事といえるでしょう。このように向上心を持っていることが、現場でキャリアを積むことにも繋がっていきます。