土木作業員とは建設現場や道路整備、河川工事など、さまざまな工事現場で活躍する仕事のことです。ここでは、土木作業員の仕事内容をはじめ、キャリアアップの道や必要な資格、将来性、給料などについて解説します。
土木作業員の仕事は、大きく分けて「土工」と「機械士工」の2種類に分類されます。
機械を使用するのが難しい土木工事の現場において、資材の運搬や穴掘りなど人力で行なわれる作業は土工の仕事に分類されます。
土工業務は、工事に必要な資材や機械の運搬をはじめ、くい打ちやくい抜き、土砂などの掘削、コンクリート施工、地盤の改良工事など、現場に応じて多様な作業を求められる仕事です。力仕事がメインになることから肉体労働というイメージを持たれる土工業務ですが、実際には掘削作業ひとつとっても、定められた仕様に基づいた作業が必要となり、高度な専門技術が求められます。
土工業務が人力での作業がメインなのに対し、機械士工業務はブルドーザーやクレーン、ダンプトラック、ショベルカーなどの重機を操作する作業を指します。
機械士工とひとくちに言っても保有している免許や技術によって仕事内容が異なり、代表的なものとしては資材の運搬、造成、埋め立てやくいの埋め込み、穿孔、土留などの作業があり。重機の操作には免許が必要になるほか、土木作業員としてのある程度の知識や技術が求められるため、土工の経験を積み、資格や免許を取得してから機械士工として仕事の幅を広げるのが一般的です。
土工や機械士工といった作業員から現場を指揮する立場の監督責任者へのキャリアアップを目指すのであれば、「土木施工管理技士」の資格が必要になります。
土木施工管理技士とは、土木工事が計画通り、かつ安全に進行できるように監督者として現場全体を統括・管理する資格です。土木施工管理技士の資格を持っていれば営業所に配属が必須の専任技術者になれ、建設業界において重宝される存在としてキャリアアップや転職に役立ちます。
ただし、土木施工管理技士は国家資格の1つであり、資格取得には学歴に応じた実務経験が求められるほか、マークシート形式の学科試験および記述式の実地試験に合格しなければいけません。合格率は学科試験が50%前後、実地試験は30%前後と難易度が高いため、長期スパンでの取得を視野に入れる必要があります。
土工業務に従事している土木作業員であれば、まずは機械土工へのステップアップを目指しましょう。機械土工の仕事に必要な資格を取得すればより専門的な仕事を任せてもらえるようになり、収入アップも期待できます。機械土工へステップアップするなら取得しておきたい代表的な資格は次の通りです。
車両系建設機械運転技能講習とは、3トン以上の機械を操作するのに必要な資格です。使用する機械の種類に合わせて「整地・運搬・積込み用及び掘削用」、「解体用」、「基礎用」、「コンクリート打設用」に区分されており、それぞれの機械に応じた講習を受ける必要があります。3トン未満の車両系建設機械を操作する場合は、小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育の受講が必要です。
ただし、車両系建設機械運転技能講習や特別教育はあくまでも現場での作業用の資格のため、これらの資格を取得するだけでは一般道路を走ることはできません。一般道路の走行には普通免許や小型特殊免許、大型特殊免許の取得が求められます。
クレーン・デリック運転士免許は、つり上げ荷重5トン以上のクレーンおよびデリックの運転操作に必要な資格です。「制限なし」「クレーン限定」「床上運転式クレーン限定」の3つに区分され、それぞれの資格で対応できる運転業務の範囲が異なります。クレーンおよびデリックのどちらも運転操作できる資格を取得するのであれば、「制限なし」の区分の受験に合格しなければいけません。
クレーンや移動式クレーンにおいて、つり具の荷掛けや荷外しの作業を行なうには「玉掛け」の資格が必要です。つり上げ荷重1トン以上のクレーンや移動式クレーンおよびデリックの玉掛けであれば玉掛け技能講習を、1トン未満なら玉掛け業務の特別教育を受講する必要があります。
土木工事は国や地方自治体が発注元となる公共工事の案件が中心のため、民間需要がメインの建設工事と比べて景気の影響を受けにくいのが特徴です。さらに、老朽化が進むインフラ整備の修繕や防災・減災の対策として今後も安定した需要を見込めることから、土木作業員は将来性の高い仕事と言えるでしょう。
ただし、ネックとなるのが体力的な問題です。特に土工のような力仕事がメインの現場の場合、50代や60代になっても現役として働くのは限界があります。そのため、土木工事の業界で長く働きたいのであれば、重機の資格を取って機械土工として活躍するか、もしくは土木施工管理技士の資格を取得して現場監督になる道を検討するのがおすすめです。
土木建築業界は現場の高齢化や、「汚い・きつい・危険」という3Kのイメージが強いこともあって、慢性的な人手不足が課題となっています。そのため、まったくの未経験や資格を持っていない人でも受け入れているところは多く、未経験だからと言って諦める必要はありません。経験はないけれど体力には自信がある、または形に残る仕事がしたいという人には、土木作業員はぴったりの職と言えるでしょう。
土木建築業界では慢性的な人手不足を解消するために、雇用条件や待遇の見直しなど、労働環境の改善やイメージアップに力を入れています。また、現場の機械化・自動化が進んでおり、安全管理も徹底されつつあることから、女性の土木作業員も年々増えてきているとのこと。女性で土木作業員を目指すのであれば、肉体労働がメインの土工ではなく、重機の資格を取って機械土工として働くのがおすすめです。
ただし、これまで男性がメインの仕事であったことから、女性専用のトイレや更衣室がないなど受け入れ体制が不十分の現場も多いのが現状です。また、労働環境は整備されても働いている人が男社会のままの価値観でいることも多く、ある程度の不便や我慢を強いられる可能性があることは覚悟しておきましょう。
土木作業員の平均年収は、300万~350万円前後といわれています。国内の平均年収が400万円台なので、土木作業員の年収は平均よりやや低めと言えるでしょう。また、日給月給制を採用しているところが多く、悪天候や閑散期などで収入が不安定になりやすいのが特徴です。
そのほかにも、土木作業員の仕事は一般的な職業と違って勤続年数や年齢に応じた昇給が見込めないため、平均年収以上の給料を求めるなら実務経験や資格取得によるスキルアップが必要になります。特に免許や資格は手当として上乗せされるほか、責任のある役職を任されることで給料アップも十分に期待できます。