監理技術者と主任技術者は、どちらも工事の現場で指揮をとる「総監督」の立場です。しかし、監理技術者は主任技術者にくらべて就任するための要件を満たすのが難しく、また、より責任が求められる、いわば上位のポジションといえます。主任技術者との違いがわかりづらいこの監理技術者という職業を、詳しくご紹介します。
工事現場には、必ず主任技術者を配置することが法律で定められています。監理技術者は主任技術者の上位に位置する立場であり、大規模な元請工事の場合は主任技術者に代えて監理技術者を置かなければなりません。監理技術者を置かなければならない規模の基準は、特定建設業許可が必要な工事の規模と同じで、総額4,000万円以上の請負金額(建築一式工事の場合は総額6,000万円以上)と決められています。
なお、4,000万円未満の規模であれば、元請であっても監理技術者を置く必要はありません。また、下請工事であれば、どんなに大規模な現場であっても、監理技術者ではなく主任技術者を配置することで要件を満たすことが可能です。つまり、監理技術者が必要な現場は「大規模で下請け会社を擁する工事」ということになります。
建設機械施工技士とは、建設現場において機械施工に関する運転操作を担当したり、監理技術者や主任技術者として現場の管理・監督を行ったりするための国家資格。1級と2級があり、通常、1級取得者が現場での監理技術者を務めます。
「大学の指定学科を卒業後に実務経験3年」「高卒者かつ2級合格者で実務経験5年」「学歴不問で実務経験15年以上」など、多彩なルートから受験資格を得ることができます。詳細は一般社団法人日本建設機械化協会の公式HPを確認してください。
筆記試験と実地試験に分かれます。筆記試験では、土木工学や建設機械原動機、石油燃料など7分野からの出題。実地ではブルドーザや油圧ショベルなどの建設機械から1種類を選択し、操作施工等を行います。
学会試験の合格率は45%程度、実地試験の合格率は85%程度です。学科試験に合格しなければ、実地試験を受験することができません。
土木施工管理技士とは、道路や河川、橋梁などの土木工事において、現場での工事工程や安全管理等の一連の監督業務を行うための国家資格。2級と1級があり、通常、2級取得者は主任、1級取得者は監理技術者を務めます。
「大学の土木・建築学科等を卒業後に実務経験3年」「高校の土木・建築学科を卒業後に実務経験10年」「2級合格後に主任技術者1年を含む3年以上の実務経験」など、複数のルートから受験資格が与えられます。詳細は一般財団法人全国建設研修センターの公式HP等で確認してください。
学科試験として、土木工学・施工管理法・法規の3種類を受験します。学科試験に合格した場合には、施工管理法の実地試験が行われます。
学科試験の合格率は55%程度、実地試験の合格率は35%程度を推移しています。
建築施工管理技士とは、大工工事や鉄筋工事、内装仕上げ工事などの建築工事現場において、工事の計画の作成や工事の施工管理などを行うための国家資格。2級と1級があり、通常、2級取得者は中規模工事、1級取得者は大規模工事を扱います。
「大学の指定学科を卒業後に3年以上の実務経験」「高校や専門学校の専門課程を説業後に実務経験10年」「2級合格後に実務経験5年」「学歴不問で実務経験15年」など、さまざまなキャリアから受験資格が与えられます。詳細は一般財団法人建設業振興基金の公式HP等を確認してください。
学科試験として、建築学等や施工管理法、法規の3分野から出題されます。学科試験に合格した場合には、実地試験として施工管理法を受験します。
学科試験の合格率は35%程度、実地試験の合格率は37%程度となっています。決して易しい試験ではないので、知識・技術の十分な習得が望まれます。
一級建築士とは、設計業務(構造設計や設備設計、意匠設計など)と工事監理業務を行うための国家資格。建築士には、ほかにも二級設計士と木造設計士がありますが、取り扱うことができる建物の高さや免責などにおいて、一級建築士は最高峰の建築士資格とされています。
学校や病院、百貨店などの大規模な建造物は、一級建築士でなければ取り扱うことができません。
「大学の指定科目を履修後に実務経験2年」「短大の指定科目を履修後に実務経験3年または4年」「二級建築士としての実務経験4年」など、複数の受験資格が用意されています。受験資格の詳細は公益社団法人建築技術教育普及センターの公式HP等を確認してください。
学科試験として、建築計画や環境工学、法規、構造力学、建築施工などの分野が出題されます。また学科試験とは別に、公示課題による設計製図試験が課されます。
近年の合格率は12.5%程度で推移しています。十分な知識・技術を習得すれば合格できる試験ではありますが、決して簡単な試験ではありません。数ある国家資格の中では、やや難易度が高い部類とされています。
第1種電気工事士とは、工場やビル、一般建造物などの電気設備工事を専門に行うための国家資格。最大電力500ワット未満の電気設備であれば、どんな建造物でも取り扱いの対象となります。下位資格の第2種電気工事士に比べ、取り扱いの対象となる電気設備の範囲が広く設定されています。
特別な受験資格は必要ありません。学歴、職歴、年齢などの制限は一切なく、誰でも受験が可能です。
ただし、たとえ資格を取得しても、免状交付を受けなければ資格を活かした仕事をすることはできません。免状交付には「実務経験5年」または「大学などで所定の科目を履修した後に実務経験3年」のうち、いずれかの条件を満たす必要があります。
筆記試験として、配電理論や電気応用、電気工事の施工方法、配膳図など9分野から出題。技能試験として配線接続、配線工事、接地工事など、同じく9分野が課されます。筆記と技能の両方に合格することで資格が与えられます。
筆記試験の合格率は47%ほど、技能試験の合格率は63%ほどとなっています。
1級電気工事施工管理技士とは、電気工事関連の最高峰とも言われる国家資格。電気工事の施工計画の作成業務を行うとともに、工事現場では監理技術者、主任技術者を務めます。
仕事内容自体は、下位資格である2級電気工事施工管理技士とほぼ同じですが、その工事規模の範囲は1級のほうが広め。請負金額3000万円以上の工事については、1級資格保有者のみが取り扱えることになっています。
「大学の指定学会を卒業後に実務経験3年」「高校を卒業後に実務経験10年」「学歴を問わず実務経験15年」など、複数の受験資格が用意されています。詳細については一般財団法人建設業振興基金の公式HP等を確認してください。
学科試験として、電気工事学等、施工管理法、法規の3分野から出題されます。また、実地試験として別途で施工管理法が課されます。学会試験に合格した方のみ、実地試験を受けることが可能です。
学科試験の合格率は56%程度、実地試験の合格率は74%程度です。実地の合格率は高いため、学科に合格するかどうかが大きなカギとなるでしょう。
1級計装士とは、計測制御機器の取り付けや、取り付けにともなう配管工事の設計業務、監理業務などを行うための国家資格。資格には1級と2級の2種類がありますが、主任技術者や監理技術者になるためには、1級の取得が必須とされています。なお、公共工事の入札においては、1級計装士の配置が前提条件となっています。
「計装工事としての設計・施工の実務経験が5年以上」かつ「稼働監督的実務経験が1年」の両方を満たすことで、受験資格が与えられます。ただし2級の有資格者においては、実務経験が4年6ヶ月に短縮されます。
「学科A」から計器、計装設計、検査と調整などが、「学科B」から工事施工法、安全衛生、法規などが出題されます。また実地試験として、工事計画、制御ロジック、計装工事材料積算などが課されます。
学科試験、実地試験、ともに合格率が65%程度となっています。監理技術者になるための国家資格としては、やや易しい部類に入るとされています。
管工事施工管理技士とは、下水道配管工事やダクト工事、冷暖房設備工事、ガス配管工事など、管工事全般を取り扱うための国家資格。1級と2級の2種類があり、主任技術者または監理技術者等の監督的業務に就く場合には、一般に1級資格が必須とされています。
「大学の指定学科を卒業後に実務経験3年」「短大や高専などの指定学科を卒業後に実務経験5年」「高校などの指定学科を卒業後に実務経験10年」「学歴不問で実務経験15年」など、いくつかの受験資格があります。詳細は一般財団法人全国建設研修センターの公式HP等にて確認してください。
学科試験として、機械工学、施工管理法、法規が択一式で出題されます。また別途で、実地試験として施工管理法が課されます。
学科試験の合格率は33%程度、実地試験の合格率は53%程度となっています。難関資格というわけではありませんが、十分な知識・技術を身に付けていなければ合格は難しいとも言われています。
1級計装士の試験に合格したのち、1年以上にわたって管工事の実務経験を積んだ方は、管工事の主任技術者や監理技術者を務めることができます。
受験資格や試験内容、合格率等については、既述の「1級計装士」を確認してください。
1級土木施工管理技士の資格を取得した場合、土木工事事業のほかにも、鋼構造物工事業における監理技術者を務めることができます。
受験資格や試験内容、試験の合格率等については、記述の「1級土木施工管理技士」を確認してください。
1級建築士の有資格者は、建築工事業のほかにも、鋼構造物工事業において管理技術者を務めることができます。
受験資格や試験内容、試験の合格率等については、記述の「一級建築士」を確認してください。
一級建設機械施工技士の有資格者は、土木工事における専門家としての立場から、ほ装工事業における専任技術者や管理技術者も務めることができます。
受験資格や試験内容については、記述の「1級建設期間施工技士」を確認してください。
一級土木施工施管理技士の資格を保有している場合、土木工事業との関連で、ほ装工事業における主任技術者や監理技術者を務めることができます。
受験資格や試験内容については、記述の「1級土木施工管理技士」を確認してください。
一級造園施工管理技士とは、公園や庭園、道路、屋上の緑化にともなう造園工事を取り扱う国家資格。造園工事における主任技術者や監理技術者の養成を目的に、建築業法を根拠に国土交通大臣が認定している資格です。
1級と2級の2種類がありますが、監理技術者になるためには1級の取得が必須条件となります。また、自治体が発注する造園工事を請け負うことができるのは、1級の有資格者のみとなります。
「大学の指定学科を卒業後に実務経験3年」「高校の指定学科卒業後に実務経験10年」「2級合格後に実務経験5年」など、複数の受験資格が用意されています。詳細は一般財団法人全国建設研修センターの公式HP等を確認してください。
学科試験として、土木工学等、施工管理法、法規の3分野から出題されます。また別途で、実地試験として施工管理法が課されます。
学科試験の合格率は41%程度、実地試験の合格率は36%を推移しています。
造園技能士とは、国が定めた技能検定制度に依拠する国家資格。1級、2級、3級の3種類があり、1級は厚生労働大臣から、2級・3級は都道府県知事から「技能士」の称号が与えられます。
1級技能士の資格を取得した場合、主任技術者や管理技術者を務めることが可能です。
「学歴等不問で実務経験7年」「大学卒業後に実務経験4年」「2級合格後に実務経験2年」「職業訓練指導員免許取得後に実務経験1年」など、さまざまな受験資格が用意されています。詳細については、試験の主催団体であるJAVADA中央職業能力開発協会の公式HP等を確認してください。
1級および2級ともに、学科試験として、造園及び公園、施工法、材料、設計図書、測量、関係法規、安全衛生の7分野が出題されます。また、別途で実地試験として、造園工事作業が課されます。
1級の合格率は25%程度、2級の合格率は40%程度となっています。
監理技術者の仕事は、基本的には主任技術者と同様に、工事現場での監督指揮となります。施工計画の作成、作業工程や品質の管理、現場の安全管理など、現場全体の管理を行うのは主任技術者と共通する業務内容です。そのため、技術的な知識の他に、現場の作業者や外部の業者との円滑なコミュニケーション能力が欠かせません。
一方、主任技術者との違いは、下請業者への適切な指導・監督をも行わなければならないこと。この点で、監理技術者は、主任技術者よりもさらに責任の重い役割であると言えます。
監理技術者になるためには、元請会社の正社員であることが必要です。また、一定の経験と知識も求められます。以下の2条件を満たした上で、監理技術者講習を受け「監理技術者講習修了証」と「監理技術者資格者証」が交付されれば、監理技術者として働くことができます。
指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・ほ装工事業・造園工事業)の監理技術者として働くためには、その工事の分野での1級国家資格を持っている必要があります。
(例)各種1級施工管理技士(土木施工管理技士、建築施工管理技士、電気工事施工管理技士など)、1級建設機械施工技士、1級建築士など
前述の国家資格を持っていない場合、学歴や実務経験年数が一定以上であれば、指導監督の実務経験を2年以上積むことで、指定建設業以外の監理技術者になることができます。
監理技術者は、施工総額が4,000万円以上の元請工事には必ず配置しなければならないため、非常に需要が高いです。それにくわえて、任命される要件を満たすことが難しく、監理技術者の数が少ないため、引く手あまたの職業といえます。そのため、年収は一般的な会社員とくらべて高い傾向で、およそ600万円~800万円といわれています。業務内容が多岐にわたり、責任のある立場でもある上、労働時間も長くなりがちで大変な仕事ですが「稼げる」職業といえるでしょう。