総務省が実施した平成30年の調査によると、建設業におけるテレワークの導入率は、18.8%。令和2年には、22.5%に伸びており、新型コロナウイルス対策の一環として、テレワークを導入する企業は今後も増え続けると予想されます。
建設業は長時間労働が当たり前の世界であり、休日も少ない状況にあります。建設業界がテレワークを導入すれば、ワークライフバランスの改善にも役立つといえるでしょう。
例えば、現場から事務所へ戻って行う事務作業は、現場から直帰して業務を行うと、それまで移動にかかっていた時間を有効に活用できます。生産性の向上も期待できます。
工事現場での作業を全てテレワークで行うとなると無理が生じますが、現場監督の事務作業はテレワークの導入が可能です。
現場監督は特に打ち合わせや事務作業が多いため、テレワークを導入するメリットは大きいといえます。
現場監督をはじめ建設業界でテレワークを導入するには、作業や内容などを具体的に考えていく必要があるでしょう。
2020年10月、建設現場へテレワーク導入を実現するため建設現場用アバターシステムを川田工業・芝浦工業大学・川田テクノロジーズが共同で開発開始しました。このシステムが完成すれば遠隔操作により、品質管理・出来形管理などの建設現場の業務を、事務所にて行えます。また現場職員や操作者などの間で、リアルタイムに情報共有できて協働作業も可能になります。
建設業界は外注工事が多く、現場監督は協力会社との打ち合わせに1日の多くの時間を要しています。その打ち合わせをオンライン化できれば、他社との打ち合わせだけでなく社内会議の見直しにもつながり、より効率アップを目指せるでしょう。
工程表や図面、作業員名簿などの文書やパソコンのデータをクラウドへ移行できます。それらの情報はスマホやタブレット端末などを利用して、現場にいながら確認が可能です。そのため、わざわざ事務所へ戻る必要もなくなります。
またクラウド上でデータを管理すると、協力会社との情報共有もスムーズに行えるようになります。
工事写真を撮影する際は、小黒板に記入してカメラで撮影して写真管理を手作業で行います。近年では、テレワークの推進に伴って、電子小黒板がスマホの画面上に表示されるアプリも登場しています。撮影した写真をクラウド上で自動的に仕分け・整理できる便利な機能が搭載されています。手間が省けて、現場監督の事務作業の負担を軽減できます。
国土交通省では、建設現場の生産性向上を目的とした取り組みi-constructionを推進しています。i-constructionとは、ICTを活用してこれまで人の手で行ってきた業務を自動化して生産性の向上を目指すというもの。
i-constructionの推進によって、建設機械を製造する企業は、遠隔操作が可能なショベルカーなどの建設機械の開発を進めています。この仕組みが実際の建設現場で活用されると機械操縦がリモートで行えるため、安全で快適な作業環境が期待できるでしょう。
テレワークを導入するには、インターネット環境が整えられている必要があります。しかし、家庭用のインターネット回線では、セキュリティ面での不安が残るのも事実。
セキュリティ対策ソフトを利用することはもちろん、外へデバイスを持ち出す場合は寄り道をしない、USBを使用しないなどの細かなルールを設けましょう。
またデバイスの初期化を遠隔操作で実行できるツールもあります。万が一の時のためにツールの導入を検討しておくと良いでしょう。
テレワークで効率化を図っていても工事の発注者と元請業者の間で連絡がうまく伝わらなかったり、連絡が取れないといった問題が起こり、結果的に時間のロスにつながる場合もあります。
テレワークを定着させるには、発注者との連絡体制を整える必要があるでしょう。
テレワークで労働時間を管理するには、明確なルールを設定することが重要です。
作業時間を記録したり、Webカメラで監視するなど、自社に合わせて方法を決めると良いでしょう。
どの業務をテレワークにできるか、具体的に検討しましょう。
現場監督の場合は、クラウドを活用した作業員の日報管理や、Webミーティングでの打ち合わせといった作業がテレワークで行えます。
工事写真の整理は、代行サービスを利用することで業務の効率化につなげられます。
テレワークを行うと、従業員とのコミュニケーションが減ってしまいます。テレワーク環境においても円滑に業務を進めるには、コミュニケーションツールを積極的に活用して報連相を活性化させましょう。