「土木施工管理技士」とは、施工管理技士の国家資格のひとつです。道路や橋、河川、上下水道工事、港湾など、さまざまな土木建設において施工管理を行います。
土木施工管理技士の特徴として、「1級」と「2級」の資格に分かれている、という点が挙げられます。 まず、1級土木施工管理技士の資格を取得することによって、「主任技術者」や「監理技術者」に選任されることができるようになり、さまざまな土木工事において施工管理や安全管理といった業務へ従事することができるようになります。この「主任技術者」とは、作業工程ごとの責任者のことを指し、また「監理技術者」は現場全体を指揮する役割を持っていますので、土木工事においてより責任ある立場を任されるということになります。
また、2級土木施工管理技士と1級土木施工管理技士の違いとして、2級は試験内容が「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3つに分かれている点が挙げられます。試験に合格すると、その合格した専門分野において「主任技術者」として施工管理を行えるようになります。
土木施工管理技士の資格を取得するためには、国土交通大臣指定機関によって実施される「土木施工管理技士」試験に合格する必要があります。
前述の通り、土木施工管理技士は1級と2級の2種類の資格がありますが、2級に合格しないと1級の受験資格が得られないということはなく、実務経験年数を満たして1級から受験をすることも可能です。
土木施工管理技士の試験は、一次試験と二次試験に分かれています(かつては「学科試験」「実地試験」という名称でした)。一次試験に合格した後、一定の実務経験年数があれば二次試験の受験が可能となります。
2級土木施工管理技士試験の受験資格としては、例えば大学の指定学科を卒業した場合には卒業後1年以上の実務経験年数を有すること、また指定学科以外を卒業した場合には、卒業後1年6ヶ月以上の実務経験を有すること、など学歴によって必要とされる実務経験年数が異なります。
他の学歴の場合に必要な実務経験年数については、全国建設研修センターの公式ホームページをご確認ください。
1級土木施工管理技士の場合にも受験資格を得るためには実務経験が求められます。2級と同様に学歴によって必要となる実務経験の年数が異なっており、例えば大学の指定学科を卒業した場合には、卒業後3年以上の実務経験年数、大学の指定学科以外を卒業した場合には、卒業後4年6ヶ月以上の実務経験が必要となります。
1級を受験する場合も、上記に挙げた以外の学歴を持つ場合に必要な実務経験年数を知りたい場合は、全国建設研修センターの公式ホームページをご確認ください。
ここでは、土木施工管理技士の資格を取得するメリットについて解説していきます。
土木施工管理技士の資格を取得した場合、主任技術者や監理技術者といった現場責任者として仕事ができるようになります。もちろん資格がなかったとしても土木工事に携わることはできますが、責任者として仕事をするためには資格が必要となります。
「管理責任者」とは、元請負の特定技術者の下請け契約の請負代金総額が4,500万円以上の場合(建築一式工事の場合は7,000万円以上の場合)には、専任で工事現場に配属される技術者のことです。監理技術者は、施工における技術上の管理を担当します。
監理技術者は、施工計画の作成や工程の管理、品質の管理などのほか、現場で働く人たちの指導監督といった役割を持っています。1級土木施工管理技士の資格を取得すると、上記のように責任ある立場での仕事ができるようになります。
また、2級土木施工管理技士を取得した場合には、監理技術者を置かなければならない工事以外に設置することが求められる主任技術者として仕事ができるようになります。このように、土木施工管理技士の資格を取得すると、仕事の幅が広がり、責任のある仕事を担当できるといった点が大きなメリットといえるでしょう。
資格を取得したことによりキャリアアップ・給与アップが期待できるといった面もあります。上記のように責任ある仕事ができるようになるため、積極的に取り組んでいくことによって評価が上がるといった点も期待できます。そのため、昇進や昇給の可能性も出てくるといえるでしょう。
さらに、会社によっては資格手当が支給されるといったケースもあります。資格手当としてどれくらいの金額が支給されるのかはそれぞれの会社によって異なりますので、自身の会社の場合について確認しておく必要がありますが、いずれにしても資格を取得することによってキャリアアップや年収のアップにつながると期待できます。
土木管理施工技士の資格を取得することで、就職や転職に有利になる可能性もあります。
資格を持っているということは、専門的な知識や技術などを持っているという裏付けになりますし、何より建設業界は現在人手不足の状態であるといわれています。団塊世代の大量退職や、「建設業界は仕事がきつい」といったイメージから若い人が敬遠しているなどさまざまな要因が考えられます。
このことから、資格なしでも応募できるとしている企業もありますので、資格を持っている場合はより就職や転職に有利であると考えられるでしょう。
また、現在ある建物の老朽化や災害からの復旧対応、道路などのインフラ整備など土木関連工事はこれからも大きな需要があると考えられます。そのため、この先転職を考えている場合には、土木施工管理技士の資格を取得し、経験を積むことを目指してみるのもおすすめといえます。
例えば1級土木施工管理技士の合格を目指す場合には「500〜600時間」の勉強時間、また2級の場合は「400時間」の勉強が必要といわれています。いずれの級を目指す場合でも、試験の半年前あたりからしっかりと学習時間を確保しながら勉強を進めていくことになります。
土木施工管理技士を目指す場合には、さまざまな勉強方法が考えられます。それぞれの勉強方法について見ていきましょう。
まず、参考書で独学をするという方法が考えられます。長い勉強時間が必要ではあるものの、しっかりとスケジュールを組んだ上で勉強を進めていければ合格を目指すことも可能といわれています。また、スケジュールが乱れてしまった場合には、挽回して学習を進められる人に向いている方法といえるでしょう。
ただし参考書で独学を進めていく場合には、わからない部分をそのままにしないという点が重要です。不明点が出てきたらすぐにその部分を確認するといった癖をつけながら学習を進めていってください。
動画教材は、試験対策の講義をDVDやインターネット経由の動画で見ながら勉強できるものです。音声で解説しているので、人によっては参考書よりも理解しやすいと感じる方もいるでしょう。動画の場合、わからないところや自信がないところについて何度も繰り返し見れる点もメリットです。インターネット経由で提供される動画であれば、昼休みなど空いた時間に見ることもできます。
動画教材と参考書を組み合わせながら学習していくという方法もあります。
土木施工管理技士の試験対策コースが用意されている専門学校に通うという方法も考えられます。専門学校であれば試験に向けたスケジュールをしっかりと組んでくれますので、試験対策の勉強について自分で管理する自信がないという方は専門学校へ通学することを検討してみても良いでしょう。
さらに、専門学校の場合は講師が目の前にいるため質問しやすいという点が大きなメリットとなります。このことから、わからない部分をそのままにしてしまう、といったことがなくなります。
試験の合格を目指す場合には、コツを押さえながら勉強を進めていきましょう。ここでは「勉強のコツ」を紹介します。
試験対策で有効といわれているのが、「過去問を繰り返し解く」という方法です。何度も過去ものを解くことで、自分が苦手にしている部分がはっきりとわかりますし、問題の傾向も把握できるでしょう。同じ問題ばかり行うのではなく、数年分の過去問を用意して、それぞれ何回か解いてみてください。
苦手な部分がわかったら、しっかりと勉強しておきましょう。解説をしっかり読むことも大切なポイントです。
試験には、選択問題と必須問題がありますが、試験対策を行う際にはまず必須問題から取り組んでいきましょう。必須問題は出題される問題全てを回答する必要がありますので、しっかりと対策しておきます。必須問題対策が終わったら、選択問題の対策に進みましょう。
また、土木施工管理技士の実地試験では、経験記述も重要なポイントとなってきますので、こちらの部分についても対策が必要です。経験記述における対策のポイントは、「ほかの人の添削を受ける」という点です。ほかの人に伝わりやすい文章を書く必要もありますので、ほかの人からのフィードバックを受けることがおすすめです。
この経験記述で合格できなければ、学科記述の採点も行われませんので、まずはこちらの対策を十分に行っておくことが大切です。
土木施工管理技士には、土木工事における施工管理計画の作成が求められます。さらに、現場でも作業工程管理、安全管理、コスト管理といった役割に加えて、用地の確保や役所などへの手続き、周辺住民への説明を行うなど、非常に幅広い範囲の業務を担当します。
土木工事にはさまざまな種類があり、河川や道路、海岸、トンネルなどの工事のほかにも、上下水道工事や土地区画整理工事、ダム工事、災害時の復旧工事などがあります。これらの工事に、土木施工管理技士が監理技術者や主任技術者として携わる、ということになります。
土木施工管理技士の資格を持っていないとしても土木工事に携わることはできますが、工事全体を管理する立場として土木工事に従事するためには、土木施工管理技士の資格が必要です。
近年の異常気象による自然災害などからの復旧工事などにおいて、土木工事が多く行われていることから、土木施工管理技士は需要が高い資格であるといえるでしょう。
繰り返しになりますが、1級土木施工管理技士資格を取得すると、主任技術者や監理技術者として選任されることができるようになります。これらの技術者は現場に配置することを求められていることから、1級土木施工管理技士は引き続き多くの方面から求められる資格と言えるのではないでしょうか。
また、土木施工管理技士を取得した本人にとっても、仕事の幅が広がる、新しい仕事を担当できるといったメリットもあります。