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現場監督の仕事で使う施工図とは?

現場監督が業務を進める上で欠かせない「施工図」について解説しています。

施工図とは「設計図から施工を行うために必要な図面」です。これから現場監督になる方が知っておくべき施工図のポイントをまとめました。

そもそも施工図とは?

設計図の「翻訳図面」

「施工図」は建築現場では業務を進める上で欠かせない図面のひとつ。「設計図があれば建築工事ができるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、設計図だけだと現場作業は行えません。

施工図は施工する建築物の設計情報をもとに、それぞれの工種・職種ごとに必要な情報をわかりやすく伝える図面。いわば設計図の「翻訳図面」です。

施工図には使用されるシーンに応じていくつかの種類があり、使用される図面の種類によって枚数も異なってきます。建築現場の多様な施工業務に関わるのが現場監督です。それぞれの施工図の種類について、しっかりと理解していなければなりません。

施工図の役割

施工図は施工業者において、実際の工事で必要になる工程や作業内容、安全性などを検討するために用いられます。コストや作業品質、また周囲の環境に対する検討もあわせて行われるのが一般的です。

また、施工図は専門施工業者や職人、作業員への指示・情報の共有を行うためにも使われます。建築プロジェクトの着工から竣工までの作業がより円滑に、より生産的に進められるかどうかは、施工図がしっかり作られているかどうかがカギです。

施工図には施工業務に必要な事項が詳細に記載されています。現場監督は建築現場を効率的に管理し、よりスムーズに工事を進めなくてはなりません。そのために、この施工図に記載されている内容を正確に理解しておく必要があります。

施工図がないと起きる不都合

実際には建築工事が施工図なしに行われることはありえません。が、「もし施工図がなければどのような事態が発生するか」を考えておくと施工図の理解を深められます。

工事現場の事務所に置かれている図面や、現場監督・工事に携わっている作業員が手に持っている図面が「施工図」でない場合、工事の現場でさまざまなトラブルが発生します。まず、工事を予定通りの工期で竣工することができなくなります。施工図には、工事全体を見据えてそれぞれの工種・職種に必要な情報が記載されています。それを理解せずに作業が行われれば、スケジュールが管理されないまま、工事が進められてしまうのです。

コスト面でもトラブルが生じます。施工図がないと各業務工程の費用がわからず、予算をオーバーしてしまうでしょう。「どうすれば自分たちの後に続く作業工程で、担当者たちが効率よく行えるか」も把握できません。工程が先に行けば行くほどリスクが積み重なっていきます。

現場監督は施工図を自ら理解するのはもちろん、現場で働く作業員たちが施工図以外の別の図面に基づいて作業をしていないかもチェックしておくのが大切。「手にしている図面が間違ったまま作業を進めてしまう」というトラブルは、致命的なミスになりかねません。

施工図が作成される流れ

設計図と施工図

施工図が作成される流れについて見ていきます。

施工図を作る前に必要なのが「設計図」。施工図は設計図を工事現場で使えるように実践的な形に翻訳した図面です。設計図には現場での施工に必要な情報はほとんど記載されない点に要注意。

設計図を作成するのは建築士です。クライアントの意向を踏まえて、建物の大きさや構造、間取り、敷地内における建設位置、内装・外装のデザインなどの設計内容が記載されるのが設計図。建築設備や水道、換気などについての設計情報も記載されます。

各都道府県に設置されている「建築主事」という確認・検査機関が設計図を審査。これに合格すれば、晴れて建築可能となります。

設計図書の作成

基本的な設計図が作成されたら、次に作られるのは「設計図書」。設計図書には、デザイン(意匠)についての情報が記載されている「実施設計図」、構造計算に関する情報が記載されている「構造図」、また建物設備に関する情報が記載されている「設備図」などがあります。これらをもとに、いよいよ実際の施工を検討する作業に入るのです。

施工図の作成

施工図には、工事現場の作業員が円滑に施工できるように、それぞれの場所で使用する素材や寸法など、施工に必要な情報が細かく記載されています。これらは設計図書に基づいて作成されるもの。施工図を作成するのは施工会社の施工管理技士あるいは建築士です。

施工図にはいくつか種類があります。また、種類によって担当者が異なるのが一般的。それぞれの担当者間・業者間で検討し、何度も修正を繰り返していきます。最終的に確定した施工図には管理者印が押されます。これが「最終施工図」です。もし最終施工図ではない前段階の施工図があやまって作業員の手に渡ってしまえば、重大な施工ミスが発生しかねません。施工図の管理には最新の注意が必要です。

施工図の種類

施工図の種類やそれぞれの作成・閲覧において注意すべきポイントを見てみましょう。

平面詳細図

「平面詳細図」とは、基本的な設計図や専門業者の図面から抽出した情報が記載された、仕上げ部分に関する作業図面のこと。

建物を平面として捉えられるように、上から俯瞰したかたちで描かれています。間取りはもちろん、窓や建具、家具、住宅設備など、決定された情報が全て掲載されており、施工図のなかでも、最も中心的な役割を果たすのが平面小サイズです。

平面詳細図のチェックポイント

平面詳細図において注意すべきポイントは「実際の使用における不具合がないか」です。建物の引き渡しを行う段階になって、「家具を設置したら、ドアが開けづらい」「収納の面積が小さい」といった不具合が発生しては大問題。平面詳細図でしっかりと確認しましょう。

意匠図

「意匠図」は、設計者の意図や独自のデザイン性をしっかりと形にするために作成される図面。意匠図には「展開図」や「木製建具図」、「家具図」などの種類があります。それぞれのデザイン物を実現するために必要な使用素材、仕上がりの寸法、設置方法等を記載。あわせて、取り付けに欠かせない下地補強や配線の有無、配線・配管図といった詳細な情報も意匠図で指示します。現場監督が確認すべき図面のひとつです。

意匠図の確認ポイント

意匠図には、それぞれの施工箇所の詳細が記載されています。俯瞰的な目線で描かれた平面詳細図とつきあわせながら、それぞれの施工箇所の関係性を確認することが可能です。

また、意匠図は全体の仕上げ作業にも使用されます。仕上げの施工に入る前に、設置する家具の扉の稼働範囲や照明との関係、タイル面の仕上げを行う時の寸法、見切り材が必要かどうかなど、仕上げの施工前に意匠図でチェック。このチェックは必要な部材の手配はもちろん、作業員に対する指示出しにも役に立ちます。

設備図

「設備図」とは、電気や水道、ガス、空調、換気、さらには消防やエレベーターといった建物設備に関する図面が含まれています。施工図のなかでも設備に関する図面は、すべて設備図として取り扱われています。

設備図の確認ポイント

設備図において確認すべきは「設備の設置にあたって不備がないか」。意匠図と同様、平面詳細図で建物全体との関係性を検討しながら、取り付けを行う建物設備について確認します。

特に注意したいポイントを以下に列挙してみましょう。

  • 設備を取り付けるために必要な寸法は確保されているか
  • 取り付け方法はどのようなものか
  • 下地の位置はどこか
  • 設備を設置場所まで搬入するルートはあるか
  • 設置作業を行うスペースはどこか
  • 実際の設置手順をどうするか
  • 設置後の点検作業はどのように行うのか
これらが設備図でしっかりと確認できなければ、実際の施工でもトラブルが発生しかねません。

配管関係であれば、ダクトスペースやパイプスペースといった設備を設置しなければならない建物もあります。こういった設備は、構造図面とも重ねて照らし合わせを行い、しっかりと施工できる空間が確保されているかどうかも、あわせてチェックしておきましょう。

施工図の「図面チェック」

施工図を確認する際に必ず行わなければならない「図面チェック」について解説します。

図面チェックとは

現場工事は施工図通りに行うのが原則です。もしも施工図の記載に誤りがあれば、どれだけ高品質な作業を行ったとしても、「失敗」と見なされてしまいます。施工図に問題がないか、施工図通りに作業を進めても大丈夫か、図面上で確認するのが「図面チェック」です。

施工図には様々な種類があります。それぞれの図面を照らし合わせて相違点がないかどうか確認するのも図面チェックのひとつです。

図面チェックのポイント:不整合

施工図の図面チェックでポイントとなるのはまず「建物として全体の整合性がとれているか」です。

それぞれの施工図は同じ建物を建設するための図面なので、各図面が齟齬なく記載されている内容があります。しかし、図面の制作者が誤った記載をしている場合には図面間でズレが発生。それぞれの内容に数値上の不整合が見られることになります。この場合、図面チェックによって「いずれかの図面の記載に誤りがある」のがわかるわけです。

それぞれの図面には優先順位があります。図面に不整合を見つけた時は、優先順位に基づいて図面をチェック・修正します。もしチェックしても修正点がわからない場合は、設計者に必ず確認しましょう。施工図の前段階で作った設計図になんらかの間違いがあるかもしれないからです。

図面チェックのポイント:符号・寸法

施工図の図面チェックでは図面の符号や寸法も確認項目。「すべての符号、寸法が間違いない数値で記載されているかどうか」をしっかりとチェックします。

「符号なんて普通は間違わないだろう」と高を括ってしまう人もいるかもしれません。まさにその思い込みが最も怖いところ。図面の符号や寸法のチェックは、面倒な作業なので、頭では「やらなければ」とわかっていても、ついつい飛ばしてしまいがちです。そういった油断のために、品質検査の段階などになって初めて符号の記載ミスが発覚し、その部分の施工を最初からやりなおさなければならない、といった事態が発生してしまいます。

ヒューマンエラーをできる限り少なくするために、図面チェックで符号・寸法を確認しなければなりません。

図面チェックのポイント:設計者への確認

施工図の図面チェックを行うなかで、不明点や確認すべき点が見つかったらすぐに設計者に確認を取りましょう。確認の際には「口頭で聞かない」のがポイントです。必ず、メールやファックスなどの文章で確認し、さらに確認をとった日付や回答期限なども記載します。ログを残しておくためです。

口頭での確認だと、聞き間違い・言い間違い・覚え間違いが発生します。ログが残っていなければ、後から重ねて確認する方法もありません。ミスが発生しないようにするのはもちろんですが、ミスが生じた際に迅速に確認・対応できる策を整えておくのも施工図図面チェックの役割です。