日本は昔から台風の直撃を受けやすい地域です。激しい風と雨による資材の飛散や足場の倒壊など、建設現場への影響は少なくありません。集中豪雨が起こるエリアでは、現場そのものが水没してしまう可能性もあるので、それらの被害を未然に防ぐ対策が必須となります。
台風が現場に近づいている予報が出たら、まず行うべき対策が足場の補強です。特に高層部分に組まれている足場は、激しい風の影響を受けやすく、倒壊してしまった場合に周囲に及ぼす被害は甚大なものになります。外部への粉塵防止シートや足場にかけている養生シートなどは、シート全体で風を受け止めてしまうことになるので撤去するか、足場に巻き付けておきましょう。風の通り道を作ることで、強風が足場に与える影響を抑えることができます。
また、足場と建物をワイヤーでつないだり、壁つなぎを再点検したりするなど、足場自体の補強も合わせて行うことで被害を小さく抑えられるでしょう。
建設現場には軽い物から重いものまで、様々な資材や重機があります。強風に飛ばされやすいカラーコーンや安全看板、表示パネルなど平たい形状のものは、まとめて寝かせておいて風の影響を受けにくくしましょう。細かい資材は袋にまとめる、もしくはシートやロープで固定して飛ばされないようにするほか、スペースがあれば事務所や倉庫に片づけておくのが良い方法です。
「重機は重いから安心」というのは間違いです。重いからこそ倒れてしまったときの被害は大きく、暴風にさらされると案外簡単に倒れてしまうこともあります。サイドブレーキを引くだけではなく、ロープや杭でしっかり固定しておきましょう。高さのあるクレーンやバックホウなどは特に要注意です。
現場の水没対策は、時間に余裕をもって行うのが未然に防ぐコツです。早い時点で台風が直撃することがわかっている場合には、施工スケジュールの変更も視野に入れて対策しましょう。
河川の決壊・氾濫など大規模な水没は事後対策を行うしかないですが、水没の影響が軽微であると予想される場合には、水の侵入を防ぐ手立てとして土嚢を使う対策が有効です。浸水してほしくないところや排水溝へ誘導する道筋に、土嚢を積み上げて水没を防ぎます。土嚢を手配してから積む作業を完了させるまでには、少なくとも2時間程度かかることもあります。安全に作業を完了させるためにも、早めに対策を立てることが重要です。
天気予報ではコースから大きく外れるはずでしたが、急にコースが変わって直撃。ちょうど基礎工事をスタートする前段階の状態で、地面を掘削した側溝部分が陥没する被害が発生したケースがあります。
最近は天気予報の精度が上がってきたので、極端なコース変更で慌てることは少なくなったものの、二次被害の発生まで考慮すると、工事スケジュールの管理は重要です。掘削工事期間を調整することも検討すべきでしょう。
台風への対策は足場を補強するほかに、資材をシートで養生・固定して十分な対策を立てたことで、現場での影響は最小限に抑えることができましたが、常設の資材置き場の管理が不十分で、屋根が飛ばされていたケースがありました。はがれた一部が近隣の家屋や自動車を破損させると、損害賠償請求に及んでしまうため、決してチェックを怠ってはいけない箇所でした。
常設倉庫や資材置き場は比較的上部と考えがちですが、耐久性や台風の規模によっては補強が必要です。また、複数人による相互チェックで、漏れを防ぐことは可能。念には念を入れて、対策していきましょう。