建設や工事現場において、工程・資材の管理やクライアントと業者との打ち合わせ、作業員への指導、安全管理などを統括する現場監督は多忙です。その中でも特に忙しい時期はいつなのか、具体的なタイミングを紹介します。
現場監督の繁忙期としては、主に下記が挙げられます。
なぜこの時期に忙しくなるのか、具体的に紹介していきます。
現場監督が忙しい時期のひとつめが「工事を開始する前段階」。工事を始める前に、工事の計画をしっかりと立てる必要があります。内容は主に以下の通りです。
簡潔にリストアップしただけでも、こなすべき業務や手続きが多いことが分かります。
そのため、日中はクライアントや業者との打ち合わせや行政への申請手続き、夜は膨大な書類の作成業務を会社で行う、といった多忙な生活を送ることになるケースが多いと言われています。
工事の初日から数日間も多忙です。初めて現場に足を運ぶ職人や作業員が多いため、現場監督は「誰が・どこで・何をするのか」を適切に指示する必要があります。
また資材や道具が届いていない、といったトラブルが生じやすいのもこの時期。各現場の仕事がスムーズに回っているかを確認しながら、発生したトラブルにも対処する必要があるでしょう。
工事が終わる頃も、書類作成業務が重なり忙しい時期となります。主な書類作成業務としては、下記のようなものがあります。
特に法律で義務付けられている「行政への検査書類」には正確さが求められており、公共工事を手掛けている場合は作成するべき書類も多いため、忙しくなるでしょう。
3月と9月が忙しい理由として「公共工事が増えること」「クライアントの決算月が多いため」が挙げられます。
国や地方自治体の年度末は3月末であるため、その年の4月以降に道路工事のような公共工事を業者に発注して、翌3月末までに完了するようになっています。また民間企業でも、3月または9月決算の会社が多く、決算前に工事の依頼が増える傾向にあります。
ちょうど「公共工事+民間企業からの工事依頼」が重なるため、現場を掛け持ちしている現場監督は多忙になるのです。
繁忙時期とは反対に、現場監督が落ち着くであろうタイミングを紹介します。
現場にもよりますが、一旦工事が始まり各部の業務が回り始めると、職人や作業員もやるべき仕事が見えてきます。現場監督は工程通りに進んでいるかをチェックする必要がありますが、見回りが中心になるため比較的落ち着いて業務に取り組めるでしょう。
雨の日や天気の悪い日は、足場が滑りやく視界も悪いため危険という理由から、ほとんどの現場は休みになります。現場監督やチーフの立場にある人はその時間を書類業務・発注業務・打ち合わせなどに充てるケースも多く、現場作業が停止している分、いつもより落ち着いて仕事ができます。
ひとつの工事現場が終了し、次の工事までの期間がある場合はかなり落ち着けます。この時期に有給休暇を消化する人も多いようです。
建築業は繁忙期の発生率が高い業種であるだけでなく、長時間勤務・休日の少なさが長らく問題となっている業界です。そのため建築業界の担い手も減っており、働く人たちの高齢化や人手不足も深刻な問題となっています。
そのような状況を緩和するために、国の政策として働き方改革に向けた取り組みが行われています。こちらで、建設業界の多忙を是正するための4つの取り組みを紹介します。
完全週休2日制を採用する業種が多くなっているなかで、建設業界はまだまだ遅れを取っています。建設業界で完全週休2日制を採用している企業の割合は2020年で約30%(※)であり、金融業界や情報通信業界が90%を越えているのに比べてかなり低い状況であることが窺えます。
このような状況を是正するために、日本建設業連合会では週休2日制を実施するための策として、全ての建設現場を土日閉所にしようという取り組みに着手。また国の対策として、労働時間に罰則つきで上限を設けることを決定しており、2024年から実施する予定です。
※参照元:BUILT「就労条件総合調査のデータから建設業の“働きやすさ”を評価する」(https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2103/03/news019.html)
建設業界では、給与や社会保険の見直しもされています。
現場の職人や作業員の中には休日よりも収入を重視するという働き方をしている人も多く、これは働く時間や内容に対して、収入が十分ではないことも原因の一つであると考えられています。
労働に対する正当な収入を確保するためにも、働き方を改革して労働者の技量にふさわしい給与が得られるような取り組みが必要です。また社会保険未加入の労働者が生じないように、保険に加入していない下請けには発注しないようにする、といった対策も考えられています。
他業種のIT化が進む中、建設業界ではそれほど進んでいませんでした。しかし最近では、生産性の向上と人手不足解消のために建設業界でもIT化を推進する取り組みが行われています。現場の効率化や情報共有の迅速化、コストの削減や品質向上などのメリットがあります。
例えば、オンライン会議ツールを利用したリアルタイムの打ち合わせや、建設現場に設置したWebカメラで監督が現場の進行状況を把握する、図面の電子化管理などが挙げられます。また、国や地方自治体が発注する公共工事の積算基準等の改善も進んでいます。
建築業界では元請けから下請けに、その下請けがさらに下請けへ発注する、といった重層下請構造が当たり前のように行われています。この重層下請構造は、厳しい納期で長時間労働を強いる・中間マージンの発生で下請けの収入が大幅に減ってしまうなどのリスクが生じやすいため問題となっています。しかし、公共工事や大手ゼネコンからの発注の中には4次・5次の下請けも多いのが現状です。
この構造を改善するために、下請次数を制限して働き方改革に繋げよう、といった取り組みが始まっています。
紹介してきた通り、現場監督が特に忙しい時期として「工事施行前と乗り入れ時」「工事の終了時期」「決算時期(3月や9月)前」が挙げられます。しかし現場監督は幾つもの案件を抱えているケースも多いため、労働環境が整っていない建設会社では常に繁忙期という状況に陥りやすくなっています。
仕事とプライベートをうまく両立していくためにも、働き方改革を推進している建設会社・派遣会社を選ぶことが大切です。