現場監督とは、建設現場や工事現場において工程・品質・安全などを統括して管理し、職人や作業員に対して指示する立場の代表者を指します。しかし、実は「現場監督」という呼称は建設業法で定められた名称ではありません。
こちらでは、現場を代表する責任者の正式な役職名や役割分担などを紹介していきます。
現場監督は「工事責任者」や「現場所長」「施工管理者」とも呼ばれます。どれも現場を指揮したり、監督・管理する人という意味合いで呼ばれますが、いずれも建設業法で定められている正式名称ではなく、法律上定められた責任者の役職は別にあります。この役職名は、建設現場や土木工事などの現場の業種や労働者の人数、作業現場の規模などによって異なります。
主任技術者とは法律で定められた技術者のことで、請負金額を問わず、全ての工事現場への配置が義務付けられています。主任技術者の主な業務は、施工計画作成・工程管理・品質管理・安全管理・下請業者の指導といった施工の管理・監督です。
主任技術者を務めるには、担当工種に応じた国家資格と経験が必要となります。建築であれば1級または2級建築施工管理技士や建築士(1級・2級)、土木の場合は建設機械施工管理技士や1級または2級土木施工管理技士などの資格が必要です。さらに一定期間の実務経験と、指定された登録基幹技能者の講習が必要となります。
監理技術者も主任技術者と同じく、現場の技術水準を確保するために配置される、法律で定められた役職です。外注総額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の元請け現場において、主任技術者の代わりに配置されるのが「監理技術者」です。
業務内容も主任技術者とあまり変わりはありませんが、工事の規模が大きくなるため、主任技術者よりも高い資格と経験を求められます。
監理技術者になるには、担当工種に応じた一級国家資格を取得するか、主任技術者としての要件を満たしたうえで、指導監督として一定の実務経験を積む必要があります。
統括安全衛生責任者とは、安全衛生責任者への指揮や統括管理を行う役職のことです。
そもそも安全衛生責任者とは、労働災害を未然に防ぐための役割を担う業務を指します。統括安全衛生責任者を選任する義務がある場所は、原則「建設業又は造船業で、下請も含めた労働者数が常時50人以上」とされていますが、ずい道建設や橋梁の建設、圧気工法による作業など危険を伴う作業では“30人以上”と決められています。
統括安全衛生責任者に特別な資格は必要ありません。現場を統括する実質的な権限を有している担当者であれば問題ありませんが、統括安全衛生管理に関する教育を受けた人が選任されるケースが多いようです。
統括安全衛生責任者が選任された現場において、統括安全衛生責任者が行う業務のなかでも、技術的事項を管理するために選任される役職が「元方安全衛生責任者」です。技術的事項には、運営・作業間の連絡・調整、作業場所の巡視、労働者の安全・衛生のための教育指導などが含まれます。
元方安全衛生責任者になるには、安全衛生の実務経験が必要です。高等学校・高等専門学校・大学の卒業学科や、職業訓練を受けたかどうかによって条件は変わりますが、最短3年から長くて10年の実務経験が必要となります。
建設業や造船業などの統括安全衛生責任者を選任すべき現場において、事業主の代理として現場の安全管理を担う役職が「安全衛生責任者」です。
統括安全衛生責任者が特定元方事業者に選任されるのに対し、安全衛生責任者は特定元方事業者以外の請負人(下請け業者)に選任されます。
安全衛生責任者の職務は、統括安全衛生責任者との連絡や安全衛生管理の計画立案・実施などが挙げられます。安全衛生責任者になるための資格は不要ですが、専門の講習を受講して必要な知識を取得する必要があります。
それぞれの役職ごとに定められた役割の違いはあるものの、現場を管理し、指示系統としてまとめ上げるという点は同じです。
しかし主任技術者と監理技術者は国家試験の資格取得が必須となり、専門スキルと知識、経験が求められる役職となります。またすべての役職に通ずるスキルとして、多くの作業員をまとめられるコミュニケーション能力を身につける必要があるでしょう。