i-Construction(アイ・コンストラクション)とは、建設生産システム全体で生産性の向上を図る取り組みです。ICTとは情報通信技術を意味します。国交省は、20個の生産性革命プロジェクトを掲げました。そのひとつにi-Constructionが含まれています。具体的には「建設現場へICTを導入して積極的に活用しよう」という内容です。
人と人、人とモノ、双方間のコミュニケーションに関するIT技術を活かすことで、たとえば、インターネット、チャットやメール、SNSなどがICTに当てはまります。ICTを現場に導入すれば、作業効率性や安全の確保やコスト削減が期待できるのです。
i-Constructionと建設や土木は、従来なら縁遠いものでした。建設や土木業界はいわゆる「きつい」「危険」「汚い」の「3K」。若者が積極的に働きたいと思わない業界イメージが定着していました。実際、建設や土木の現場に従事している技能者は高齢者が多く見受けられます。後継の若者が入らなければ、日本の建設や土木業界は衰退していくだけです。
国土交通省のi-Construction資料(※1)によると、技能労働者約340万人のうち今後約110万人が高齢化で離職の可能性があるという報告もあります。若年層の入職では、29歳以下は全体の約1割程度でした。
総務省統計局でも、令和元年12月の建設業就業者は488万人で、ピークだった平成9年の685万人から約29%の減少です(※2)。建設業就業者のうち55歳以上は3万人増加しているのに、29歳以下は約1万人の減少という結果でした。早急に手を打たなければならない状況が続いているのです。
(※1)参照元:(pdf)国土交通省公式https://www.mlit.go.jp/common/001149595.pdf
(※2)参照元:(pdf)総務省統計局公式https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf
i-Constructionでは3つの柱を掲げて推し進めています。
ICT技術の全面的な活用例をあげると、UAVを使用して天然ダムや砂防関係施設の点検や調査を行った企業があります。他にも、ドローンによる三次元測量、ICT建設機械を使用した施工、CIMによる3Dモデルと属性情報の管理などです。
規格の平準化では「設計や発注や材料の調達、加工や組立といった生産工程と維持管理まで全般のプロセスを最適化、サプライチェーンまで効率化しよう」という内容で、目的は生産性の向上です。コンクリート活用でのガイドラインの策定や、鉄筋のプレハブ化や型枠のプレキャスト化、各部材の規格を標準化するなども含まれます。
施工時期の平準化の目的は、工期の偏りをなくそうという内容です。たとえば、年度末になると工期が集中します。一方、年度明けは工事量が一気に減るという状況でした。繁忙期と閑散期が極端だと、収入が不安定になります。休暇を取りたくても、スケジュール調整もむずかしく。その問題を「施工時期を年間標準化して解決しよう」というものです。発注計画を作成するときから、繁忙期と閑散期が極端にならず、施工時期を平準化します。結果、人材配置を効率化できますし、収入や労働時間や休暇を安定化できるのです。
i-Constructionにより、測量、施工、検査でメリットを得られます。
測量ではドローンを活用することで、三次元測量や空撮もできるため、短時間化と正確性をもたらします。また、危険な場所でもドローンなら可能です。ドローンによって得たデータをソフトに取り込めば簡単に三次元測量図も作成できます。技術者が現場に直接行き、確認するという手間を省けるのです。出張コストだけではなく、安全性の確保という面でもメリットがあります。
施工でもメリットがあります。たとえば、パソコンにより自動操縦ができる重機であれば、免許保持者もいなくてもカバーできるのです。その分、企業は人件費の削減につながります。ICT機器は操作を覚えるだけで女性でも対応できるのです。
危険な現場でも、ICT機器なら対応できます。災害時なら、従来は危険でも人間が立ち入らなければならない場所もありました。ICT機器を導入すれば、二次被害の回避も期待できるのです。人が入れない狭いでも対応できるため、作業効率化という面でも力を発揮します。
検査もICT機器があれば効率化が期待できるのです。測量検査は人力で日数をかけていたため、人件費もかかります。その問題はドローンで解決できるのです。三次元測量とデータにより図面化できるのです。スマートグラスなら、現場に監督が出向く手間も省けます。パソコンで現場の状況を確認できますし、指示もできるのです。移動と交通費を抑えるのに役立ちます。このように多くの面でi-Constructionはメリットがあるのです。
i-Constructionを検討する際は、上記3つを押さえておきましょう。ICT化は効率化という点でメリットはありますが、導入コストが大きいのが難点。そのため、下請けや孫請けのような中小零細企業では熟慮が求められます。ただし、時期次第で補助金が出ている場合があるため、随時、補助金や助成金の情報にアンテナを向けて、チャンスが来たらすぐに申請できるように準備しておくといいでしょう。
ICT機器を操作できる技術者の育成も重要です。ドローンを飛ばすだけでも、専門的な知識や技術が求められます。飛ばせても本来の業務である、定点を正確に撮影するには技術が必要です。測量データを活用する際、ソフトを操作する場合でも簡単ではありません。知識や経験が必要なため、一日研修すれば誰でも簡単に使いこなせる、といったものではないのです。ドローンに限らず、他のICT機器に関しても状況は変わりません。
従来の測量技術を数十年やってきた50代以上の世代が使いこなせないケースもあります。I-Constructionを無理に導入して「今日から使いこなしてください」と伝えて技術を習得してもらうのも年配の熟練者には困難です。熟練者の技術とICT化の対応についてバランスを取らなければなりません。
費用対効果も熟慮が必要です。i-Constructionの導入は上手く使えばメリットはとても大きいものです。しかし、導入コストを回収できるだけの利益があるかは熟慮が求められます。I-Constructionを導入するなら、人工、資材、施工まで根本の合理化も考えなければなりません。その上で本当に利益を得られるかどうか決断が必要です。